エシカルとは「倫理的な」の意味、「お互いさま」精神

エシカルとは

食メディア「ペンとスプーン」では「人・世の中・地球、どれにもやさしい」エシカルな食回りのモノ・コト・人を紹介してまいります。まず「エシカルって何?」から説明させていただきます。

目次

エシカルとは:倫理的/どの命も置き去りにしない

「エシカル」ときいて何をイメージしますか。

  1. エコとかサステナブルとかオーガニックとかとの違いが分からない
  2. オカタイ感じ。「意識高い系」の人たちが食いつきそう
  3. 何だかよいことなのは分かるけれど値段が高い

まず①について。

Ethicalとは

エシカルは英語で「倫理的な、道徳的な」との意味の形容詞です。

近ごろでは「ヒトにも環境にもやさしい」「社会に貢献する」モノの売り買いを「エシカル消費」と呼んでいます。

法律や何かの定めではありません。「お互いさま執行法」とか「思いやり基本法」なんてないですよね。エシカルも同じです。

では倫理的、とは。

広辞苑によると「人倫のみち実際道徳の規範となる原理。 道徳」です。ああ、余計分からなくなりそうです。

「世も人も地球も傷つけない」営みのイマドキ形容詞といえます。

ecologyとは

エコのもとであるエコロジーは英語で生態学、自然環境の意味の名詞です。

これまた近ごろ意味が広がり「環境にやさしい」モノやことをさしています。

sustainableとは

サステナブルは英語で持続可能なの意味の形容詞です。sustain=維持する/支える、able=できる、ですね。

国連は2015年「持続可能な開発目標」(SDGs=The Sustainable Development Goals)を掲げました。人・世の中・地球を傷める開発は続かない、地球上の「だれも取り残さない(Leave no one behind)」という誓いが込められています。

Leave no one behind、いい言葉ですね。国連バクー事務所(アゼルバイジャン)が制作した曲もありました。中盤(1分40秒あたり)でコーカサス地方の民族楽器・タールがクローズアップされて素敵です。英語もシンプルで分かりやすいので聴いてみてくださいね。

organicとは

オーガニックは英語で「有機の、有機栽培の」の意味の形容詞ですが、これまた農薬や添加物に頼らずに生み出されるモノの形容へと広がっています。世界中に認証マークがありますね。

どれもめざすゴールは同じです。あえていえば

オーガニック<エコロジー<サステナブル<エシカルの順に話が大きく概念的に

②オカタイ感じ、というのは「お役所が取り組んでいること」とのイメージがあるからでしょう。日本の消費者庁ではエシカル消費を

「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」

としています。本当にカタイ‼よいこと書いてあるのに‼

消費者庁のエシカルについてのリーフレット

消費庁のエシカル消費についてのリーフレット(2018年発行)。

こうして図をみるとエシカル消費って「地上にあるどの命もリスペクトするモノのやりとり」ですね。

だれでもかかわりがあるのでオカタイはずはありません。

認証ラベルにも触れられていますが目安の「ひとつ」にすぎません。ラベルの有無より大切にしたいのは「応援したい」「相手をリスペクトする」思いです。

エシカル消費のきっかけ:「ラナ・プラザの悲劇」

「エシカル消費」という言い方は欧米で2000年ごろから広まりました。

世界的な動きとなったのがバングラデシュで2013年、複合ビル「ラナ・プラザ」が崩落した事故です。欧米ブランドの縫製工場で働く人たち約1130人が亡くなりました。

安全が無視された環境で、月給は6000円ほど。1日10時間以上、ミシンを踏んでいた10~30代の女性たちが犠牲になりました。

廉価なファストファッションの影が浮き彫りになり、ファッション界は猛省を迫られました。「ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償」という映画(2015年)にもなりました。

バングラデシュで「ラナ・プラザの悲劇」が起きた年、私(多田)はインドで暮らし始めました。バングラデシュはインドの西、文化を分かち合う「隣人」です。

住んだデリー近郊の街にも同じように崩れそうなビルがありました。はだしの子を連れたサリー姿の女性たちが廃墟に住みついていました。40℃を超す5、6月でも路上で暮らすほかない人々を見るのも日常でした。炎天下でカレーをつくり、チャパティー(全粒粉パン)を焼いています。

苛烈な環境が遠い世界ではありませんでした。

インドで7年、暮らしました。変化を目の当たりにしました。13億人の巨大市場はどんどん成長しています。あっというまにオンライン社会になり、街角のココナッツ屋台でもスマホ払いができるようになりました。

インド・グルガオンのスラム街

スラム街でも衛星アンテナはあるところが多い=インド・グルガオンで Photo by Chikako TADA

でも、です。

相変わらず路上に靴を履いていない子がいます。ショッピングモールの前ではペンを売る少女が「マダーム」と近寄ってきます。

赤子を抱えたサリー姿の女性は赤信号でとまったタクシーの窓をコンコンたたき「マダム」と手を口に入れるしぐさをします。

「コンコン」と「マダーム」を7年間ほぼ毎日、聞き続けました。キャンディやビスケットを時折、渡すぐらいでした。胸がぎゅっとしながら何もできず、かといって何年いても慣れず、でした。

私の何分の1かのサラリーであろう運転手がサッと窓を開け、小銭を渡す場面にも遭遇しました。もらった女性のほうも「ありがとう」を言うわけでもなく堂々と受け取ります。

お互いさま、なんですね。

私にできること、声をあげることから始めようと帰国しました。

SDGs:地球を救うためにカウチからできること

「エシカル消費」は国連による「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標(ゴール)のうち、主にゴール12番目「つくる責任 つかう責任/Responsible consumption and production」にあたるとされています。でもどのゴールにもかかわりがありますね。

SDGsの17のエンブレムロゴ使用は国連のガイドラインに沿っています

国連のサイトで「The Lazy Person’s guide to saving the world」というおもしろいタイトルのページがあります。

「怠け者が地球を救うためのガイド」というのが直訳です。

「だれにでもかかわりのあることだから、お互いさまだから、できることからゆるーく地球を救おうね」というのが趣旨でしょう。レベルが4段階あって、「カウチからできること」に始まり、最終段階の4は「職場でできること」がリストになっています。

カウチからできる9つのこと

  • PCなど電化製品はひとつの電源タップにまとめよう
  • 紙の通帳をやめよう/オンラインやモバイル払いにする
  • 女性の人権や気候変動について興味深い投稿をみたら「いいね」だけではなくシェアを/Share,don’t just like.
  • 声をあげよう/Speak up!:地元や国に対して人や地球を傷つけない行動を求めよう
  • 電灯を消そう:テレビやPCのスクリーンの明かりで快適なら、他の光はオフしよう
  • ネットいじめは報告しよう/Report online bullies:中傷に気づいたら知らせよう
  • 情報を手に入れよう/Stay informed:地元ニュースやSDGsについてウォッチしよう
  • #globalgoalsのハッシュタグをつけて目標達成のための行動をSNSでシェアしよう
  • カーボン・オフセット(温室効果ガスなどを森づくりなどで吸収)に取り組もう

*日本語訳もコチラにありました。

Pen & Spoonが考える「エシカルものさし」

安いから、好きだから、ずっと買っているから。

そんなものさしだけではない、「エシカルものさし」も売り買いの軸に加えませんか。

「正しい」とか「正解」なんてありませんし追いません。お互いさまです。いつもは「安いモノサシ」でいいんです。

自分が思いを寄せられる、思いをはせられる、応援したくなる「ここぞ」は「エシカルものさし」の出番です。

「ついで」という言葉も好きです。何かをしてあげるとき「ついで」だからいいよ、というのはお互い負担にならなくていいですよね。シングルユース(1回だけで捨てる)に終わらせない、無駄をしない、でも「ついでだから無理はしていないよ」と。

どうせ使うなら、どうせ生まれたなら、せっかくの命をまっとうするまで使いたい、との思いです。

③値段が高い、のイメージですが、確かにその通りです。

お野菜もオーガニックがよいとは思うけれど高いから、時々は買いますが毎回は無理です。スーパーではまず産直コーナーに行き、手が出なければ通常の売り場で。閉店前の半額キャベツにも手を出します。捨てられるものを救ったのだからエシカルですね。

できる範囲で、無理せずに。それこそエシカル&サステナブルです。

Pen & Spoonではゆるーく、Lazy Person向けのエシカルを紹介していきます!

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この記事の著者

多田 千香子のアバター 多田 千香子 Pen&Co.代表取締役CEO

食メディア「Pen & Spoon」編集長。1970年、岡山県備前市生まれ。県立岡山朝日高校、岡山大学法学部卒。1993年、朝日新聞社入社。記者・編集者として12年余り勤務。2005-2007年、フランス・パリ在住。料理学校ル・コルドンブルー パリ校製菓上級課程修了。「パリのおやつ旅のおやつ」(朝日新聞出版)「パリの小さなキッチン」(レイチェル・クー著、翔泳社)など著書・翻訳書8冊を出版。辻調製パン技術講座(通信制)修了。2013-2020年、インド・グルガオン在住。インド三井物産などで勤務。コロナ禍で2020年に帰国後、食メディア「Pen & Spoon」を創刊。2023年6月、Pen&Co.(ペンアンド)株式会社を共同創業。週刊英和新聞Asahi Weekly(英文)、ソーシャル経済メディアNewsPicks +dでコラム連載。

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