コーヒーをめぐる旅
エシカルな話

【コーヒー農園ツアー体験記】生産高は世界7位・インドのコーヒー事情

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旅のきっかけは自家焙煎から

インドで「コーヒー部」と称して自家焙煎を楽しんでいました。コーヒーの生豆を煎るところから楽しむ「週末ロースター」がインドのラン仲間にいました。彼に教えを乞い、フタ付きの金網に入れてユッサユッサと煎ります。

「水平シャープ!」がコツです。煎ること13~15分、褐色の豆のかぐわしさといったら…。煎りたてをポリポリかじっていました。

自家焙煎を楽しむ
Photo by Chikako TADA

生豆は南インド・カルナータカ産がAmazon.inで買えました。歯みがきや走ることと同じようにルーティンになり、週1回ペースで煎っていました。

南インド・カルナータカのコーヒー農園へ

いつか「コーヒーをめぐる旅」ができたら。そう公言していたらマコトになりました。インドから本帰国するYasuyoさんと「卒業旅行しよう」と盛り上がり、同年代の友が集まりました。インド在住18年のNobuさん、ダンサーでシンガーのMariさん、そして私です。

紅茶の国インドはコーヒー豆の一大産地でもあります。せっかく生産国に住んでいるのだから…と産地へ飛びました。カルナータカの州都バンガロールです。2017年1月でした。

インドを代表するLCCにして航空市場シェアNo.1のインディゴ(IndiGo)にデリー空港から乗りました。デリー~バンガロール(ベンガルール)の飛行時間は3時間です。

インドのIndigo
Photo by Chikako TADA

めざすは州都バンガロールから西へ250km、車で5時間のクールグ(Coorg)です。
バンガロールのホテルを午前6時半、レンタルしたトヨタ車イノーバで出発しました。運転手はカーナビを操り、手書きの地図も持っていました。お、すばらしい。

途中のドライブインでさっそくコーヒーを頼みました。南インド式で高いところから注ぎ、泡立てていれてくれました。1杯30ルピー(50円)ほどです。

南インド式コーヒー
Photo by Chikako TADA

どんどん山奥に入ります。それでもわらわら人がいます。さすが人口12億人だわ。ホテルの看板が立ち並んでいますが、予約した農家民宿「Golden Mist(ゴールデン・ミスト)」はありません。何度か電話して尋ね、たどりついた道には看板もありませんでした。隠れるにもホドがあります。分かるわけないー。

標高1200m、コーヒーチェリーに迎えられて

標高1200メートル、コーヒーの赤い実が迎えてくれました。緑の実が熟して赤くなると収穫です。「コーヒーチェリー」とも呼ばれます。

枝にコロリン、まとまって実をつけていてブレスレットみたい。かわいいです。

指で割ると中から青いタネが出てきました。「コーヒー部」で見覚えのある生豆です。

私のは1つの実から2つ出てきましたが、Mariさんのは1つだけ出てきました。「ピーベリー」と呼ばれ、珍重される豆です。

コーヒー豆の生豆
Photo by Chikako TADA

コテージ1棟を4人で借りました。3食つき、1人1泊2500ルピー(4200円)です。屋根裏部屋があり、薄っぺらいハシゴをのぼって上がれます。「ハイジの家みたい」。Yasuyoさんが言いました。雰囲気のあるしつらいです。

Golden mistのコテージ
Photo by Chikako TADA

マネジャーの54歳・バスさんが園内を案内してくれました。敷地は25エーカー(東京ドーム2個分)で、コーヒーはアラビカ種、ロブスタ種が栽培されています。

アラビカ種のほうが背丈が低く、ロブスタ種は大きめです。タネまきをしてから4年ぐらいで実をつけ、1年に1回、収穫するのだとか。緑から赤色になった1cmほどの玉は手摘みされ、そのまま日干しで1週間ほど乾燥させるそうです。

「ゴールデン・ミスト」では洗濯されたシーツの下に干されていました。どちらも日当たりがいいのが肝心、ということでしょうか。1週間後には皮をむき、使い込まれた焙煎機で焙煎します。

シーツの下で乾燥
Photo by Chikako TADA

農園中を歩き回りました。紅茶も栽培されているのが意外でした。地元の人向けといいます。

コメ、カルダモンやコショウといったスパイスも育てられているのだとか。樹齢896年というマグノリアの木もあります。スピリチュアルとは縁遠い私ですが、何かが宿っていそう。手をあわせました。

ホタルが部屋の中を飛ぶ

コテージに戻るとバックパックを背負った若い夫婦が着いたところでした。

オランダからので3歳の男の子連れです。ガイド本「ロンリー・プラネット」に載っているそうです。タフだなあ。いつまでいるの?と訊くと「分からない」。そういう旅、またしてみたいなあ。

コーヒーを飲みながら私たちの話は尽きませんでした。

宿で出されたコーヒー
Photo by Chikako TADA

クールグ名産のポークカレーをいただき、寝るころになってNobuさんが言いました。

「あ、ホタルだー」。部屋の灯りを切ると確かにベッドの上、緑のあかりがぼんやり、くるくる回っています。幻想的です。コーヒーに招かれたのでしょうか。

だんだん眠くなってきて、薄い毛布3枚にくるまります。ざわわ、ざわわー。コーヒーの実りを揺らす風が聞こえます。遠くで鳥の鳴き声がします。静かな夜の音、久しぶりだな。

バンガロールの自家焙煎「JAISWAL COFFEE」邦人女性が経営

早朝に宿を出たのは、バンガロールで会いたい人がいたからです。

「自家焙煎ジェイスワル珈琲(JAISWAL COFFEE ROASTER)」を営む宮田恵子さんです。迷って路地裏の店にたどり着いたころ、午後1時半を回っていました。「すみません、こんなところまで」。恐縮して恵子さんは言いました。

JAISWAL COFFEE
Photo by Chikako TADA

小さな看板が控えめに掲げられた店は4畳半ほどでしょうか。焙煎をみせてもらいました。
赤いインド製の焙煎機で1回につき2kgを煎るそうです。コーヒーも飲ませていただきました。

「ああ、おいしい」「飲みたかったね、こういうの」。

小さな店で4人がくっついて、口々に言い合いました。

しみじみ、じんわり。ほっとしました。心映えのする味です。旅の最中に飲んだコーヒーで一番の味でした。

恵子さんはコロナ渦にも負けず、マイペースで毎週土曜、お店を開けているそうです。バンガロール市内だと配達可能、インド国内だと郵送で届けてもらえます。

Jaiswal Coffee Roaster

No.45, 10th Main, 1st Cross, Begur Main Road, Hongasandra, Bengaluru 560068 Karnataka, India
Tel. +91 720 460 3616(日本語可)

インドのコーヒー:生産量は世界7位

インドのコーヒー栽培はイスラム聖者ババ・ブータンが17世紀、巡礼先のイエメンからコーヒーの種をこっそり持ち帰ったのが始まりとされています。生産量は世界第7位(2019年)で、うち8割が輸出用です。主な産地はインド南部のカルナータカ州、ケララ州、タミルナドゥ州です。

世界のコーヒー生産量The World Atlas、2019年。万以下は切り捨て)は下記になります。ベトナムが2位なんですね、ちょっと意外でした。

1 ブラジル 259万トン
2 ベトナム 165万トン
3 コロンビア 81万トン
4 インドネシア 66万トン
5 エチオピア 38万トン
6 ホンジュラス 34万トン
インド 34万トン

デリー圏のコーヒー豆屋さん

Devan’s South Indian Coffee & Tea

50年以上前から続く老舗です。デリーのカーナマーケットにある焙煎所で買うのをお勧めします。スーパーでも売っていますが別もので、しかも割高で味わいも劣ります。焙煎所での購入がベストです。Blue Tokaiに比べたらパッケージもそっけないですが、うんと安くて十分おいしいです。

勤務した商社でも毎日、違う種類の豆が味わえるよう取り寄せていました。モンスーン・マラバール(Monsooned Malabar、250g 225ルピー)が人気がありました。配達もしてくれます。

住所…131, Khanna Market, Lodhi Colony, New Delhi
Tel:1124611474、日休

Blue Tokai Coffee Roasters

インドの商都ムンバイで2013年、スタートしました。まもなくしてデリーのサケット地区にオープン、あっというまにサードウエーブと呼ばれる新しいコーヒーの潮流をインドにもたらした寵児です。

ブレンドはなく、シングルオリジン(農園単位)での販売です。個性的な味わいで「俺のロースト」といった印象です。どんどん店を増やしています。コーヒー教室もしています。行ってみたかった…。コーヒーとあわない気もしますがフレンチフライが好きでした。また別途、語りたいと思います。

「コーヒー回りのプロダクトを手がけたい」と考える源流となった旅です。コーヒーを愛する一人として作り手も飲む人もハッピーになる、仕組みを作れたらなと思っています。

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