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映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」感想 | 器を志で満たした人

なぜ君は総理大臣になれないのか
映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」ウェブサイトより

立憲民主党の小川淳也・衆院議員を17年にわたって(続編も取材開始とか)追っている大島新監督のドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」を観ました。6月に公開され、いまオンラインでも上映されています。

私は8月に映画館に足を運び、オンラインでも繰り返し鑑賞しています(10月2日まで)。7年ぶりに復帰した日本社会へのリハビリも兼ねています。

同年代で香川という近しさ(おこがましいのですが)もあり、さまざまなシーンに自分を重ね、気づきと勇気をもらっています。応援本能ってあるんだな、とも。その一方で選挙の風景は少なくとも30年前から変わっておらず、ため息が出ました。

有権者としての私

私自身は「わりあい」、選挙に小さいころから関心がありました。「小説吉田学校」を読んだり、母の投票について投票所(自分の通う小学校の体育館)に行くような子でした。

高校時代には土井たか子さんの演説を聴きに行き、大学時代は与野党2つの候補者の選挙事務所(節操がないというか…)でアルバイトもしました。1990年初頭、30年前です。

有権者としても30年近く「ほぼ皆勤」です。投票権のある選挙に行かなかったのは1回だけです。パリ留学中に参院選(確か)があり、在外選挙人名簿への登録が間に合わなくて投票できませんでした。

ちなみに以前は登録に3カ月ほどかかっていました。いまは海外転出届を出すと同時に在外選挙人名簿に登録さえ済ませておけば投票できます。

下記はインド在住時代の在外選挙人証です。たまたま一時帰国中だった昨夏の参院選も一票を投じました。

在外選挙人証Photo by Chikako TADA

映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の感想

私が小川議員の名前を知ったのは最初の立候補時、2003年です。勤めていた新聞社で所属する部署の選挙担当として、です。東大から中央官僚という経歴からして「よく野党から出たな」と思ったぐらいです。

映画では「ことだま」を感じさせる言葉が詰まっています。いくつか紹介します。

「人生の8割は我慢、残りの1割は辛抱、最後の1割は忍耐」

2016年に議員会館で監督から映画の企画書を渡された際の言葉です。「このままで終わるんじゃないか、このままで終わってたまるか、という気持ちが半々でせめぎあっている」。50代が近付き、その気持ちが痛いほど分かります。

「日の目をみないというか、求められていないっていうか」

場面はこのあと、田んぼに向かって「ごあいさつ」をするのぼりを立てて演説しているシーンに変わります。何ともコントラストが…。

落選したのは初回のみ、あとは5期連続で当選を重ねています。はたからみると順風満帆…とまではいかなくても、少なくともバッジは外していないわけです。選挙区であれ比例区であれ当選は当選、議員は議員ではないでしょうか。永田町の論理に何ともむずがゆくなります。

出てきた結論はゼロかいちかにみえる。51対49で決まったことが。政治っていうのは勝った51がどれだけ残りの49を背負うか。勝った51が勝った51のために政治をしているんですよ、いまは(2003年、選挙カーの中で)

32歳のころ、初出馬の際の言葉です。大島監督も印象に残った言葉としていますが、氏の度量、器の大きさを感じさせます。

そして監督は「発表するあてもなく時々カメラを回した」のですが、これも何気なく、しびれました。それこそ日の目をみないかもしれないのに。それでも追いたいと思わせる人だったということでしょう。感じ入りました。

おふたりとも胆力の人です。

いちばん苦しいのは、本当に修羅場なのはシリア難民だと思いながら毎日…

所属していた民進党の混乱時期、2016年の言葉です。いま私も自分を重ねて言い聞かせています。

この言葉が発せられるのはご自身の議員宿舎です。

監督を迎えてコーヒーを2杯分、用意していました。カメラマンの分もでしょう。国会議員が、です。人柄がにじみ出ます。

かっとうを抱えながら戦った2017年の選挙のシーンが印象的です。

慶応大・井出教授の魂からの叫び、慟哭するかのような応援演説が胸に迫ります。「All for All」と言っておられましたが、この本に出てきます。

リベラルは死なないPhoto by Chikako TADA

選挙カーでのシーンも心に残ります。後部座席からの撮影で表情は見えません。本人の顔は写っていないのに(写っていないからこそ、でしょうか)心の揺れが痛いほど伝わります。

「変な感じになっちゃったなあ…」「無所属ねえ…」「うーん…」

選挙事務所の風景にもため息が出ました。

封筒にチラシを入れ(いまどき郵便)、家族総出で電話で投票を頼み(固定電話の需要はココにあったか)、のぼりを立てて街を練り歩く…。

前述したように30年前、アルバイト学生としてやったこと、見聞きしたことと何ら変わっていませんでした。ちなみに巻きずしやうどん、から揚げがふるまわれるのも同じですね。

選挙は報道する立場でも経験しました。こちらも、もう20年近く前です。記者が腕章をつけてカメラのシャッターを連打し、テレビ局は大きな機材で待ち構え…と、こちらも同じなんだなと思いました。

小川さんはいまでも高松では4万7000円のアパート暮らしといいます。「ホクホクの油揚げ」がお好きなんだとか。「揚げっちゅうのは本当にうまい」と目を細める姿に、何ともほのぼのしました。

最後のシーンで「総理大臣になりますか?」と監督は問いかけます。小川さんは逡巡しながら下記のように答えていました。

イエスといえばいいのに。ひるむ自分がいる。でもノーなら今日、辞表を出します。イエスだからまだここに踏ん張っている。

新聞社時代の元同僚・ガクさんとよく「ウツワ論」になります。「人間、持って生まれたウツワというものがある」と。

同級生や元同僚が志を持ち、何かに挑戦する。うまくいったりいかなかったりの話を聞くたびに「その違いは何なのか」と話し結局、「ウツワと志」だよね、で終わります。

小川さんのように政治家として、人間としての大きな器をあふれんばかりの志で満たしている人が報われない(小川さん本人の言葉では「十数年くすぶり続けている」)とは何という損失でしょうか。

映画を通じて彼を応援しながら自分を励ましています。小川さんのような人が日の目をみない、報われないのは本当に「違う」はずです。彼のためというより自分のため、この世の中のために応援します。

選挙改革も切にのぞみます。小川さんに限らず、あらゆる議員が名前を連呼し、田んぼに向かって頭を下げるより、政策にリソースを費やすべきでしょう。

社会に出てから四半世紀、女性をめぐる状況は変わっていない。ため息をつくばかりでなく、自分にできることで貢献したい。そう考えて「ペンとスプーン」を始めました。

Profile多田千香子プロフィール:1970年、岡山生まれ。地方出身、母子家庭、女子という「三重苦」からあこがれの新聞記者へ。12年余り勤めてパリ留学→フリーランスの「おやつ記者」に。匿名の投書弾を浴び筆を折る。47歳にして12年ぶりの会社員に復帰。派遣→正社員→業務委託と異なった雇用形態で3社で働く。2020年5月に本帰国。...

映画のおかげで初心を胸に刻みました。気づきをシェアすることから一歩を踏み出そうと書き記しました。

Author
Chikako Tada
Chikako Tada
食メディア「Pen & Spoon」編集長。元・朝日新聞記者。ル・コルドン・ブルー・パリ校製菓ディプロム取得。パリⅢ大学で仏語を学ぶ。TOEIC895点。辻調製パン技術講座(通信制)修了。フランス・スイス・NZ・インド・タイ・香港で食セミナー/指導。
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