やろうエシカル

インド手仕事布の世界:CALICO・小林さんの仕事観

CALICO
「CALICO:the ART of INDIAN VILLAGE FABRICS」提供。写真中央が小林さん

インドの手仕事布ブランド「CALICO(キヤリコ)」代表/小林史恵さんの話を久々に聞きました。仕事と社会を考えるメディア「MASHING UP」のオンラインイベントです。
テーマは「私の仕事の作り方」でした。

凛とした世界観をInstagramとともに紹介します。

 

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CALICO起業:インドへ続く道

私が彼女と出会ったのは10年前です。彼女はCALICOを始める前、経営コンサルタントとしてインド駐在中でした。

史恵さんは20代、メディアの仕事に携わったのち「自分でサバティカル(長期休暇)イヤーを1年設けて」、NGOのプログラムなどに参加します。

自分で決めて休み、立ち止まり、仕事のたて糸にしています。

NGOでは「いろいろな課題があっても自分は何もできないのだけれど、こんなにもやることがあるのか」と気づかされたそうです。

サバティカル後は経営コンサルティング会社に7年半、勤めました。

「新しいマーケット開拓」とのミッションでまず新興国BRICsがありました。もともと布が好きで「インドには見知らぬ豊かな香りのする世界がある」「貢献する糸口がつかめるかも」と考えるようになり、インド駐在に手を挙げました。

 

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経営コンサルだけあって農村支援や太陽光など「壮大なテーマ」を追いかけました。課題解決の方法を学びながら「自分の興味のあるもの」「自分がする意味のあるもの」を考え、布の世界へ進むことを決めました。

「考えながら動く」「計画を立てるより進みながらつくる」という史恵さんがCALICOをおこしたのは2012年です。

インドの布仕事の魅力

もとよりインドには複雑で重厚な布の歴史があります。「簡単に事業参画はできないのでは」とも言われたそうです。

インド独立の父マハトマ・ガンディーは「カディー(手つむぎのコットン)は村という太陽系における太陽」と言ったそうです。織り師はいまなお400万人にのぼるといいます。

 

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彼女の仕事はゼロからはじめているわけでも「インドのかわいそうな村を助ける」だけでもありません。

「経済的に恵まれていないのは事実と思いますし、比較的豊かとされるグジャラート地方でさえ貧しい村はたくさんあります」。ただ経済のものさしだけでは測れない豊かさがあると感じたそうです。

「服飾は万人が経験する、極めて重要な生活の一部です。だからこそ服飾の仕事をいまやっていると思います」。

興味のある方向に突き進みつつ自分がやる意味を考え、村に何を持ち込むべきかを問いかけているといいます。

CALICOの仕事でインドの農村に行くたび「布の音」が聞こえるという話が印象的でした。

サリーをはらっとかける音、織りの音が聞こえるんですよ。音を心に蓄積しているうちに、音に呼ばれるようになったんです。

美しい村において「布仕事」とは、おカネを稼ぐ以上の営みがあるといいます。

 

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起業する、アルゴリズムから出てみる

起業して働く意味を問われた史恵さんはこう答えていました。

企業はそもそもエシカルなもの。安全でおいしい水を飲むのと同じように、あまねく社会のためのもの。

「ソーシャル・インクルーシブ(社会的包摂)やサステナブル(持続可能)は前提」といいます。

日本はいいものが遠ざかる。効率化をした挙句、自分たちを不自由にしているのでは

手仕事が消えつつある日本にいると実感します。「効率化一辺倒でないほうに心がひかれる」と言っていました。

検索エンジンによって心を見透かされ、属性によってパターン化され、答えが用意されてしまう時代です。世界でひとりしかいないはずの「私」なのに。

「(検索)アルゴリズムから出てみる」「自分が生きていてラクと思う社会から離れる」のが好きなことをみつける手立てのひとつでは、と話していました。

 

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新型コロナの影響でインドのアトリエを閉じ、イベントが中止になり…。「大混乱です」と笑いながら言います。

でもCALICO9年目にしていろんな気づきがあったそうです。「ずっと止まらずにスピードを加速していたのが、ゆっくり考えることができました」。

挫折はつきもの。挫折と思わない。やらないほうが機会損失。

「会社では失敗をしに行けない」といいます。

「でも自分で会社をしていると腹をくくって、失敗するってつもりでやれる」。失敗することで分かることがあるから「3回ぐらい小さな失敗をしたほうがいい」と話します。

CALICOのストーリー、そして私

「CALICO」はブランドというだけではありません。現在、手がけているのは下記になります。

キュレーションは「職人や生産団体の作品をより明確に紹介する場やシーンの展開」で、「GAAM NO OTLO PROJECT(ガームノオトロプロジェクト)」と名付けられています。

1.生産団体やNGOとの提携による布の開発
2.インド人デザイナーの支援・作品の代理販売
3.自社ブランド委託販売・卸
4.直販
5.生地・生産の受託生産
6.キュレーション(職人の招待・展示)

史恵さんと直近で会ったのは2年前です。デリー郊外のスターバックスでした。私は経営コンサルティング会社への転職が決まり、同じ業界にいた史恵さんに話を伺いたかったのです。

史恵さんはインドの農村と日本を往来し、駆け巡っているイメージでした。

 

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そういうと「ぶざまをさらしていますよー」と笑っていました。「元の同僚たちは何やってるんだろうな、ってきっと思っていますよ」と。

そして私にはこう言いました。

みんなチカコさんの、次のストーリーを待っているんですよ。

ぐっときました。会社員になることを選んだ私は、何とも言えない思いで言葉をかみしめました。おりのように心の奥底に残りました。

あらしのような2年を過ごし、挫折も苦しみも超えていま、彼女の予言通り「次のストーリー」をつむぎ出しました。改めてご縁に感謝して言葉をかみしめたいと思います。

Author
Chikako Tada
Chikako Tada
食メディア「Pen & Spoon」編集長。元・朝日新聞記者。ル・コルドン・ブルー・パリ校製菓ディプロム取得。パリⅢ大学で仏語を学ぶ。TOEIC895点。辻調製パン技術講座(通信制)修了。フランス・スイス・NZ・インド・タイ・香港で食セミナー/指導。

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