小麦粉について分かりやすく解説します。薄力粉・中力粉・強力粉の違いはグルテン量の差です。それぞれの用途や代用する場合の水の量、計量スプーン換算や保存法、商品のレビュー、海外の粉事情まで!参考にしてくださいね。
目次
白い小麦粉、茶色の小麦粉の違い:皮から挽いたかどうか
全粒粉は小麦の表皮、胚芽、胚乳まですべて挽いて粉にしたもので、食物繊維やビタミンB1、鉄分が多く含まれています。パンやクッキーにすると素朴で滋味深い味わいになりますね。
白い小麦粉は胚乳だけでつくられています。
計量換算:大さじ1=8g、1カップ=107g
白い小麦粉:大さじ1=8g、1カップ(200ml)=107g、全粒粉:大さじ1=9g、1カップ(200ml)=125gです。
粉によってちがいはあります粉によって若干、ちがいます。
日本 | 大さじ1(15ml) | カップ1(200ml) |
白い小麦粉 | 8g | 107g |
全粒粉 | 9g | 125g |
アメリカのレシピで作るときには注意してくださいね。
アメリカ | カップ1(8oz=237ml) |
白い小麦粉 | 130g |
全粒粉 | 150g |
アメリカの1カップは8オンス(oz)で237mlです。日本の「1カップ」より大さじ2以上、多いです。したがって粉はアメリカの1カップ=130gです。
アメリカの重さの単位はグラム/キロではなくオンス/ポンドですので、粉類もグラムではありません。
レシピではオンス表示もあまり見かけず、カップ表示が主流です。日本の「カップ」とは容量がちがいますのでご注意ください。
1カップ=130gと107gではだいぶん、差が出ますから。
イギリスは日本と同じグラム/キロ表示なので分かりやすいですね。スターシェフのJamie Oliverのレシピもグラム表示です。
保存:しっかり口を閉じて常温でOK。1年以内
しっかり口を閉じて常温で。冷蔵庫だと結露、においが心配なので避けます。
私はIKEAの袋止めクリップでとめ、さらにジップ付き袋に入れています。
保存は薄力粉・中力粉が1年、強力粉はグルテン量が多いため半年が目安とされています。
薄力粉、中力粉、強力粉の違いはグルテンの量
薄力粉、中力粉、強力粉の違いは「グルテン」の量の違いです。グルテンはタンパク質のひとつです。
小麦粉は「炭水化物」とされますが、タンパク質も6~15%ほど含まれています。タンパク質の85%を占めているのが「グリアジン」と「グルテニン」という2種類です。
小麦粉は水を混ぜてこねると「グリアジン」と「グルテニン」が混ざってグルテンが生まれます。
「グリアジン」はベトベトとした粘性があり、グルニテンはゴムのような弾性があります。
このためグルテンは両者の特徴「粘性」と「弾性」をあわせもちます。
薄力粉は「軟質小麦」からできていて、タンパク質を6.5~8.5%ほど含みます。グルテン量が少ないため、サクっとした軽い食感やふんわりさせたいものに向いています。サクサクしたクッキーやふわふわしたケーキです。
薄力粉はもちろん料理にも使えます。向かないのは打ち粉です。キメが細かく、しっとりしているため役目を果たせません。できたら強力粉を使いましょう。
タンパク質の多い「硬質小麦」は強力粉になります。タンパク質は11.5%以上で、もっちりとした食感を出すのに適しています。
薄力粉と強力粉の特徴のちょうど中間の小麦粉が中力粉(準強力粉とも呼ばれます)で、タンパク質は9%前後です。バゲット、うどん、ピッツァなどに向いています。
小麦粉にはタンパク質に加えて「灰分(かいぶん)」の表示もあります。灰分とは栄養用語で、カルシウム、鉄、ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウム等のミネラルをさします。小麦の外皮や胚芽部分に多く含まれています。
灰分が多い粉は小麦の香りが強く、灰分が少ないと軽く仕上がるとされています。
タンパク質と灰分の表示にも注意して選んでみてくださいね。
薄力粉⇔強力粉の置き換え:水分を15%増減させること
「強力粉」とレシピに書いてあるけれど、ないので薄力粉を使いたい…と言う場合(その逆も)は要注意です。
薄力粉はグルテンが少ない=水分を吸収しないため、強力粉のレシピを薄力粉にそのまま置き換えるとかなりべたつきます。
強力粉のレシピで薄力粉を使う場合:水分量を85%に減らす
反対に「薄力粉」とあるのに強力粉を使いたい場合は、水分量が足りなくて伸びず、ダンゴになってしまいます。
薄力粉のレシピで強力粉を使う場合:水分量を15%ほど増やす
豚まんのレシピで違いを実験しています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
小麦粉ってこんなにあるんだ!を実感する通販サイト
私が使うのは下記の4つです。日本はすごい。プロ用の食材が気軽に手に入ります。(2021年2月8日現在)
店名 | 発送日 | 配達料無料 | 特徴 |
TOMIZ(富澤商店) | 翌日~ | 税込5,980円以上(常温・クールとも。全国) | 100年を超す老舗。通販だけでなく全国に77店。香港にも。 |
Cotta | 翌日~ | 10,000円以上(ビジネス会員、常温のみ。全国) | 乾燥材から発展した大分の資材屋さん。包材に強い。 |
粉に砂糖ドットコム | 3~5営業日 | 1万円以上(沖縄以外) | 店名通り粉と砂糖がマニアックな品ぞろえ。他社より安い。 |
ママパン | 4営業日 | 8,800円以上(常温・クールとも。北海道・沖縄を除く) | 滋賀の製パン機械・材料屋さんの小売り。業務食材も多い。 |
薄力粉 | お菓子にも料理にも使える万能選手
薄力粉は前述の通りお好み焼きもクッキーも使える一番、ベーシックな粉です。薄力、宙力、強力で1種類だけ買うなら薄力粉です。私はドルチェを軸にいろいろ試しています。
*すべての商品リンクは「Pen & Spoon」編集部の判断によって選んでいます。「Pen & Spoon」は自身のアフィリエイトポリシーにより、広告収入を得ることがあります。
ドルチェ(江別製粉) / 2.5kg TOMIZ(創業102年 富澤商店) 薄力粉 小麦粉
北海道産100%、蛋白9.3±0.5% 灰分0.34±0.03%
ドルチェはお菓子づくりに欠かせない大定番です。サブレを作ると「かみ心地」がよくて、粉そのもののおいしさが感じられます。サブレはもちろん、シフォンやカステラにもおススメです。
特宝笠はタンパク質が少なく、ふわっとした焼き上がりです。シフォンケーキやスポンジケーキをつくると軽く、持ち味が出ます。
産地:アメリカ主体、蛋白6.2±0.5%、灰分0.35±0.03%
スーパーバイオレットは万能選手です。お菓子を作り出したころ、よく読んでいた小嶋ルミ先生のレシピ本に登場するので愛用していました。生地が軽く仕上がりやすいのが特徴です。シフォンケーキをよく焼く方はぜひ。
TOMIZ
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クーヘンは灰分が高く、粉の香りがしっかりします。サブレに使うと最高で、ヴァニラビーンズもいりません。
cotta(コッタ)
¥1,198 (2025/04/02 17:01:48時点 Amazon調べ-詳細)
エクリチュールはかみごたえがあって、これも好き。ホロホロとほどけるような口当たりで、力強い味わいの粉です。フランス産ですからフランス菓子を焼くのがお似合いです。
「黙らせサブレ」をエクリチュールでつくるとパリの味になり、ガレット・ブルトンヌを焼けば気分は仏西部ブルターニュ!です。

Photo by Chikako TADA
中力粉 | バゲットやフランスの焼き菓子、うどんに
中力粉は「うどん粉」とも呼ばれるタイプです。なかなか常備はしていないかもしれません。
準強力粉は中力粉と強力粉のあいだです。準強力粉=中力粉を同意義でかまいません。
レシピに「中力粉」と書いてあって手元になければ、薄力粉2割、強力粉8割で置き換えるという手もあります。
ちょっと面倒(←私)ならばパン系なら強力粉、お菓子系なら薄力粉で作ります。食感の違いが出るというだけ、失敗はありません。
TOMIZ
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北海道産小麦、蛋白11.3±0.5%、灰分0.67±0.05%
リスドォルはパンだけでなくお菓子作りにも使われる定番の粉です。
ル・コルドン・ブルー代官山校で教えておられたローラン先生の著書「うちのお菓子はブルターニュ ―ローラン・ポワルヴェのフランス菓子教室」にもリスドゥルがよく登場します。かなり愛読しました。
「フランス」は15年以上前、辻口博啓シェフの本でみたのが最初です。(そこで「フランス?何それ?」となって作るのを挫折…)。定番中の定番です。鳥越製粉のHPによると「1960年、日本で最初に開発された本格的なフランスパン用粉です」とあります。タンパク質が多く、パンを焼くともっちりした食感になります。
ママパン
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フランスのパン屋さんで使われているMINOTERIES VIRON社の粉です。お値段が張るので何回かしか買ったことはありませんが、さすがとうなります。しっかりした風味がします。
強力粉 | パン、クレープ、カステラ、ルー、打ち粉にも
強力粉はタンパク質の量が一番、多くてパンにするとふわふわふくらみます。クレープを作るのに薄力粉の替わりに使うともっちりします。カステラにもどうぞ。弾力のある仕上がりです。餃子の皮にもいいですね。
さらさらしているのでルーにも使いやすいです。ソース・ベシャメル(ホワイトソース)もなめらかに仕上がります。
さらに前述の通り、打ち粉には強力粉が最適です。パンだけではなく意外に使いみちが多いのです。買ったはいいけれどなかなか減らないという方、いろいろに使ってみてくださいね。
はるゆたか100% / 2.5kg TOMIZ(創業102年 富澤商店) パン用粉 強力粉 北海道産強力粉 国産 小麦粉
はるゆたかは私の「常備粉」です。値が張りますが250gで150円ほど、あとは水とイーストと塩でベーグル6~8個は焼けます。どうせ手間ひまかけて作るならおいしいほうがいいですし、それにしてもベーグルそのものを買うよりはうんと安いです。
「春よ恋」は「はるゆたか」の後継品種です。はるゆたかは育てにくいこともあり品薄になりがちで、現在は「春よ恋」が主力です。日本のパンらしいふわふわしたパンが焼けます。
スーパーカメリヤ(カメリア)は灰分が少ないので軽く、クセのない白いパンが作れます。ドーナッツやあんぱんなど菓子パンにいいですね。
日清フーズ
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カメリヤは日本を代表する強力粉です。スーパーマーケットで売っているのはたいていコレですね。スーパーカメリヤより灰分が高く、メニューを選ばない万能選手です。
私が初めてパンを焼いたのは小学生のころです。うちにやってきた緑色のオーブン付属のレシピブックに載っていたバターロールで、ものすごくおいしかった記憶があります(思い出は美化されます!)。
1980年代当時、もちろん材料の通販なんてありませんでした。近所のスーパーで、おそらくカメリヤを使ったはずです。
おまけ:世界の小麦粉
粉の分け方に国際基準があるわけではなく、国によってずいぶん違います。
アメリカの小麦粉:オールパーパスフラワーが主流
アメリカのスーパーで見かけるのはAll-purpose flour(オールパーパスフラワー=中力粉)、Bread flour(ブレッドフラワー=強力粉)、Cake flour(ケーキフラワー=薄力粉)です。
ベーキングパウダー入りのSelf-rising flour(セルフライジングフラワー)というのもありますが、北米在住の友人によると「Self-Risingは感覚的には古い世代」とのことです。
「気の利いたスーパーだとイタリアの00をピッツア用として」置いているそうです。
ちなみに関西ではいまでも「メリケン粉」(国産の小麦粉は「うどん粉」)と言いますよね。名前の由来は「アメリカン」で明治時代、輸入した粉をこう呼んでいました。
フランスの小麦粉:灰分のちがいでType45~150に分別

フランスのスーパーで売っている全粒粉 Photo by Chikako TADA
フランスでは灰分の含有量によって45~150の数字で示されます。
Type 45は薄力粉、Type55が中力粉、Type65が強力粉にあたります。全粒粉になるとType150になります。
イタリアの小麦粉:外皮の含有量によって分類
北イタリア・ピエモンテの製粉所「ムリノ・マリーノ」を訪ねたことがあります。木製の製粉機2台で石臼がグルグル回っていました。
無農薬で育った有機小麦を、少しずつ丁寧に挽く。うまみが飛ばず、滋味深く仕上がるといいます。日本にも輸入されています。

石臼で挽くMarino社の粉 Photo by Chikako TADA
北米在住の友人も「イタリアの00」と言っていたように、ピッツァの粉として知られているのはTipo 00です。
イタリアの小麦粉は外皮の含有量によって分けられていて、00は精度が一番高い粉になります。00はケーキを焼いたりもちろんピッツァやパスタにしたり、万能選手です。
インドの小麦粉:全粒粉か中力粉か
インドで手に入りやすい小麦粉は2種類です。アタ(Atta)は全粒粉で、北インドの主食チャパティーの材料です。マイダ(Maida)は中力粉にあたります。
ナンなどはこちらですね。ちょっとクセがあります。お菓子作りにもパンづくりにもひと工夫が必要です。